溶射

溶射とは、加熱することで溶融またはそれに近い状態にした粒子を、物体表面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理法の一種です。

溶射の特徴
●低温処理であり、殆どあらゆる材料上へ溶射可能
●加熱溶融・軟化する材料であれば、殆どあらゆる材料の溶射が可能
●プロセスが簡単であり、複雑形状部材や大型部材へも適用可
●他の成膜プロセスに比べ、成膜速度が格段に大きく、厚膜も可能
●作業が容易で、現場施工も可能であり、コストパフォーマンス大
●ドライプロセスであり、有害廃液、排ガスの排出がなく、環境に優しい
溶射

溶射の目的

●形状・寸法修復

通常、各種の機械部材は、摩耗や腐食により、部材が損傷を被った場合には、形状や寸法が変化し、限界を超えると、使用することができなくなります。しかし、近年の溶射技術の進歩は、これらの損傷した部材の形状や寸法を元の状態に修復することを可能としました。すなわち、損傷部に溶射を行って寸法を復元し、その後仕上げ加工を実施することで、新品の状態、場合によっては、耐食性の向上など、さらに機能を向上させることで、元の状態以上の性能に修復することができます。

●形状・機能の修復

水力発電用タービンやバルブは、土砂などの摩耗粒子を含む高速の水流に曝されており、摩耗粒子によるエロージョンやキャビテーションエロージョンなどにより、激しい摩耗を受けています。この摩耗によって消失した部分を溶射によって元の形状に修復するとともに、さらに耐摩耗性に優れた表面を被覆することにより、従来の20倍の寿命延長に成功した例もあります。抄紙機械、印刷機あるいは製鉄機械においては、多数の大型ロールが使用されており、これらのロールは、各種摩耗、あるいは腐食雰囲気に連続的に曝されており、時間とともに、表面粗さや清浄度などの表面機能が劣化していきます。従来は寿命到達により新ロールと交換していましたが、溶射による寸法・機能の修復が可能になり、大幅なメンテナンスコストの低減が可能になっています。

●寸法復元

150,000回転もの高速から急停止する鉄道用モータターボチャージャの炭素鋼製のシャフトは激しい摩耗を生じますが、この摩耗したシャフトにステンレス鋼を溶射することにより、寸法復元が実現するとともに、より高い耐摩耗性を付与することで、大きなコスト低減が可能となりました。また、印刷機のプレスシリンダーの表面は短時間で摩耗が生じますが、ニッケルやクロム合金などを含む特種材料を溶射することにより短時間での修復が可能となりました。溶射の高速成膜速度と優れた性能により、従来のめっき法にとって替わろうとしています。

●クリアランス制御

航空機や発電用ガスタービンにおけるガス流路のクリアランスの制御は、エンジンの効率や燃料消費率などに大きな影響を及ぼすため、ガスの漏れる隙間をできるだけ小さくする試みが多くなされてきました。加工精度の限界や運転中の機械的・熱的変形などのため、この隙間を小さくすることは困難を極めましたが、溶射によるアブレーダブルシールは画期的な解決策として、受け入れられました。

実用例

●繊維業界

・ガイドロール、ガイドピン ・スピンドル

●製鉄業界

・高炉 ・転炉部材 ・ブライドルロール ・ローラテーブル ・デフレクタロール
・焼鈍炉ハースロール ・電気めっき設備 ・コンダクタロール
・溶融亜鉛めっき設備 ・シンクロール

●製紙・印刷業界

・圧胴ロール ・アニロックスロール ・カレンダーロール ・ドクターブレード
・グリップロール

●発電施設

・ガイドベーン ・シリンダーランナー ・水力ランナー

●船舶

・バルブステム ・ピストンリング ・シリンダーカバー ・ノズルリング

●その他産業機械

・建設機械:ワッシャー・アームシリンダー
・石油化学機械:ポンプ、バルブ、シール、インペラー
・分級器 ・ローター ・ブロワー・インペラー
・ボイラ/焼却炉:チューブ・スーツブロアー
・ガラス成形プランジャー
・焼結炉・トレイ
・ガラス製造ライン・攪拌器
・プラスチック機械:押出スクリュー・シリンダー
・石油堀削装置

金属溶射による再生

腐食・磨耗が深い部品の肉盛修正が可能です。

クランクシャフト 溶射後

▲クランクシャフト 溶射後

クランクシャフト 溶射後の研削

▲クランクシャフト 溶射後の研削

シャフト① Before

▲シャフト①

シャフト② Before

▲シャフト②

プランジャー Before

▲プランジャー

デフケース

腐食・磨耗が深い部品の肉盛修正が可能です

モーターブラケット

ベアリング装着部・はめあい部の磨耗修正

▲ベアリング装着部・はめあい部の磨耗修正

その他加工一覧

モーターローター

▲モーターローター

駆動ライナー

▲駆動ライナー